Home|About Explorer's Nest|Policy|Staff|What's Technical diving?|Technical/Sports diving education|CCR(Closed Circuit Rebreather)|Dive tour|Equipment|Mail
Explorer's Nest

テクニカルダイビングは講習システムを基本としたレジャーダイビングの一ジャンルです。ただし、対象環境や使用器材、使用ガス等は、一般のレクリエーショナルダイビングが想定する範囲とは異なります。

現状の一般のレクリエーショナルダイビングには最大水深は40m未満、フィールドは直接浮上可能なオープンウオーター環境、さらに減圧停止を必要としないダイビング計画で潜る等、いくつかの制限があります。従って、器材や講習の内容もこの制限の範囲で潜ることを想定して構成されてます。もちろん、こうした制限の内側でも楽しむことの出来るテーマは豊富に揃っています。多くのダイバーは一生楽しめる趣味として一般のレクリーショナルダイビングを満喫していることと思います。

しかし、一方で、古くからこうした制限外のダイビングに魅力を感じるダイバーも少なからず存在していました。水深40mを超えるエリアの生物や地形等に興味を持ってトライするディープダイビングや生物観察や撮影にじっくり取り組むための減圧ダイビング、刺激的な体験や探究心に駆られた洞窟や沈船への内部進入等です。

レクリーショナルダイビングが想定する限界を超えたダイビングは大きなリスクを伴います。そもそもダイビングは本来人間が生きてゆけない環境を器材に依存して楽しむリスクのあるレジャーです。そのリスクをなるべく小さくするために現状のレクリーショナルダイビングの器材構成があり、講習システムがあるわけですから、それらがカバーしていないダイビングが結果的に非常にハイリスクとなるのは当然です。

そこで、こうしたハイリスクなダイビングのリスクを可能な限り小さくし、アプローチの安全性を高めるための教育システムが生まれました。この教育システムをベースとして潜るダイビングがテクニカルダイビングです。

アプローチ

一般のレクリエーショナルダイビングもテクニカルダイビングも、ダイビングに対する基本的な考え方に大きな違いはありません。しかし、使用するガスや器材、潜る環境、計画等の違いによって、実際のダイビングへのアプローチには異なる部分が少なからず出てくることになります。ここではそうした違いによるアプローチや潜水計画の相違点をいくつか上げることで、テクニカルダイビングを説明してみたいと思います。

オーバーへッド環境と減圧ダイビング

水中洞窟や沈船内部等のオーバーヘッド環境でのダイビングや減圧停止が必要なダイビングを一般のオープンウオーター環境のレクリエーショナルダイビングと同列に考えるのは間違いです。

オーバーヘッド環境のダイビングでは水中から直接水面に浮上することは物理的に不可能です。減圧停止が必要なダイビングの場合も、物理的な障害はありませんが、減圧停止を無視して水面に浮上することは大きな危険を伴います。いずれのダイビングも、エア切れや水中での突然の器材の不調等が起きた際に”水面に浮上して浮力と呼吸を確保する”という、一般のレクリエーショナルダイビングにおける最もベーシックな緊急手順を取ることは出来ないのです。また、バディとはぐれた場合も”水面に浮上して速やかに再会”というバディシステムの基本ルールに従うことは出来ません。

従って、こうしたダイビングでは、起きた問題を全て水中で解決する必要があります。万一、水中で解決できないトラブルやアクシデントが起きた場合は短時間で生死の問題に発展する可能性が高くなります。また、バディとはぐれた場合も、万一の際はエアのシェアや、時間・水深・方位等の情報の提供、トラブル解決のサポート等を期待できるバディというバックアップのない状態でのダイビングを続行せざるを得ない状況に陥るわけです。

さらに、オーバヘッド環境では日差しが入らないことによる視界の悪化や水の循環が制限されることで溜まった沈殿物の巻上げによる視界不良、ルートが制限されている場合は出口を見失うといったリスクを考える必要もあります。こうしたことからオーバーへッド環境を潜るダイビングや減圧ダイビングを過剰なリスクを犯さないで行うにためは一般のレクリエーショナルダイビングとは異なる器材や器材構成、スキル、潜水計画が必要となるわけです。

テクニカルダイビングでは潜る環境やダイビングスタイルに合わせて必要な器材と器材構成を吟味し、また必要なスキルを完璧にマスターすることが求められます。さらに、ストレス下でも冷静に自身をコントロールすることが可能なメンタル面での強さを養うことも必要です。こうした過程を経て初めて、一般のレクリエーショナルダイバーにとってのハイリスクなダイビングも、リスクを過剰に高くすることなく楽しむことが可能となるのです。また、テクニカルダイビングの講習カリキュラムはジャンルや難易度に応じて細かく設定されていますから、自身のレベルに対してのリスクを低くキープしながら、楽しむことが可能な範囲を広げてゆくことが出来るハズです。

トラブル・アクシデントマネージメント

一般のレクリエーショナルダイビングにおいても、可能性のあるトラブルと個々のトラブルに対する予防法及び対応法を知り、それらをマスターしておくことはダイビングを行う上で不可欠なテーマです。しかし、シビアな環境でのダイビングも想定されるテクニカルダイビングでは、その重要性がより高くなります。そのため、テクニカルダイビングでは一般のレクリエーショナルダイビング以上に、トラブルを起こさないための準備やチェックを重視するだけでなく、トラブルが起きた際のバックアップや実践的な対応能力を確実に身に付けることが求められます。

例えば、器材を選択する際は、性能や信頼性、使いやすさが最優先されます。逆にトラブルの元となる可能性を持つ器材は、いかに高性能で使いやすくとも敬遠されますし、万一、そうした器材の存在が目的に対して不可欠である場合は、起こりうるトラブルを熟知し、その解決法を完璧にマスターした上での使用が求められます。

器材の構成に関してもトラブルや故障の原因となりやすい要素、活動の邪魔になったり抵抗の元となったりする不要な器材は極力減らすことがマストです。必要な物を吟味し、不必要な物は排除するミニマム主義の徹底は、器材構成を考える上での重要なポイントなのです。

また、バディとはぐれた場合も水面で再開という方法が取れない、あるいは、バディと横並びで行動することが難しい場合も少ないない等、バディシステムが成立しない状態でのダイビングを考える必要のあるテクニカルダイビングでは”生存をバディに依存しない器材構成”が必要です。生存に必要な器材は全て自身でバックアップを持ち、さらに、トラブルもバディの手を借りることなく自分自身で解決できることが必要となるのです。

実際のダイビングに際しては、ダイビング前の慎重なチェックはもちろん、ダイビングをスタートした時点で、一旦停止し、バックアップを含む全装備に異常がないかをチェックしてから先に進むという手順が取られます。また、少しでも使いに部分があれば、速やかに改善に努めることはテクニカルダイバーの常識です。

起きてしまったトラブルに対しての対応も、単に知る、経験しておく、というレベルではなく、実践で確実に使える対応をマスターし、常に実践でスムーズに使えるレベルをキープするよう、定期的なトレーニングを続けることが求められます。これは、”可能性のあるトラブルはいつか必ず起こる、しかも最も起きて欲しくない時に起こる”というマーフィーの法則をベースとした考え方によるもので、講習のトレーニングメニューもこの考え方に添って構成されています。

一方、過酷な環境、限られた時間の中で効率的な活動を行うためにはバディやチームがそれぞれに役割を受け持ち、それを確実にこなすチームプレーが必要となる場合も少なくありません。テクニカルダイビングは、バディ、チーム間のコミュニケーションを重視し、チームをひとつのシステムと考えて活動する機会の多いダイビングでもあります。従って、バディやチームの誰か一人でも危機的な状況となることで、その場の全ダイバーが危険な状態に陥る可能性もあります。例えば、狭い洞窟の奥で一人のダイバーがエア切れを起こして暴れることで沈殿物が巻上がったり、ガイドロープが切れたりすれば、その場にいる全ダイバーが帰りのルートを見失う可能性が出てきます。こうした状況に陥らないよう、テクニカルダイビングの講習ではトラブルを起こしたバディのケアに関しても徹底的なトレーニングを行います。過酷な環境、限られた時間の中であればあるほど、信頼できるバディ、チームメンバーのサポートがトラブルの解決をスムーズにしてくれることは想像に難くないでしょう。そして、さらにトラブルのスーズな解決は、サポートする側の危険回避にもつながるのです。

潜水計画

例え全身をテクニカルダイビング用の装備で固めていても、ダイビング自体が成り行き任せではテクニカルダイビングとは言えません。長時間の減圧や浮上ポイントが限定されたダイビングを行うには、水中の行動を正しく管理する必要があります。成り行き任せで深度や時間、ルートを決めると、減圧に必要な時間やガス量を把握することが出来なかったり、ガスが不足して浮上ポイントまで戻れない、といった危険な状態に陥らないとも限りません。

そこで、テクニカルダイビングではダイブテーブルや減圧ソフトを使い、潜る前の段階で必ず潜水計画を立てます。さらに、万一、何らの事情で計画が狂った場合に備えて、本来の計画より水深が深くなった場合や潜水時間が長くなった場合に対応するためのバックアップの計画も用意します。そうした計画と個人のデータに基づいて必要なガス量(万一の場合を考えた予備のガスも必ず用意します)、帰路に着くべき残圧等を割り出し、必ず参加ダイバー全員によって確認します。計画はスレートや水中ノートに書き出して水中に持ち込みます。ダイブコンピューターも携帯しますが、それはあくまでバックアップ及びオンタイムの減圧情報の確認のためのツールとして利用することになります。

あるダイビングにアプローチする際、そこに潜むリスクを洗い出し、認識し、そのリスクに対する対策を万全にした上で、初めて実際のダイビングをスタートするという考え方や手順に基付いた非常に慎重なダイビング、それがテクニカルダイビングなのです。
What's Technical diving?
▲top
(c) Copyright 2007 Explorers Nest. All rights reserved.
All materials and Copyrights on this site subject to Legal Notice.

トレーニングを受けていないダイバーのケイブシステムへの進入に対する警告(セノーテにて)
ビキニ環礁の水深55mに沈むアメリカの空母”サラトガ”